美容師の離職率は高い?自分に合うサロン、離職しない職場の選び方
「美容師」は、さまざまな職業があるなかでも離職率の高い職業といわれています。美容師は、美容業の花形ともいわれ、カットやカラーリングなど髪の毛のお手入れ全般の業務を行います。華やかなイメージや、普段から美容院に行く機会もあり、美容院という職業に憧れている人も多いでしょう。しかし一方では、理想と現実のギャップも大きく、離職率が多い職業ともいわれることが多いです。
そこで本記事では、美容師の離職率が高い理由ややりがいについて解説します。記事の後半では、自分に合うサロンや離職しない職場の選び方も紹介しています。職場の環境次第で、仕事のモチベーションは大きく左右します。美容師に憧れている方や、これから美容師の道に進みたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
美容師の離職率はどのくらい?
厚生労働省のデータによると、美容師が含まれる「生活関連サービス業・娯楽業」の離職率は15%でした。産業全体の離職率が8%のため、美容師の離職率は一般的な職種よりも高めだとわかります。
これらは美容師のみのデータではないため、あくまで参考ではありますが、業界では1年以内の離職率は30%、3年以内の離職率は56%ともされています。こうした観点からも、美容師の離職率は高いといえるでしょう。
以下は、美容師の免許登録者数(累計)と従業美容師数の一覧です。
美容師 | |
免許登録者数(累計) | 約123.8万人 |
従業美容師数 | 約48.8万人 |
参照元:美容師制度の概要について
上記のデータから資格を保有していても、実際に美容師として働いていない人も多くいるのが分かります。資格を保有している方のなかには、病気やケガ、または子育てや介護など家族の理由で働けない方もいるでしょう。
また、美容師免許を保有していないと働けない職業も多くあります。
- ヘアメイクアーティスト
- スパニスト(ヘッドスパを行う職業)
- アイリスト(まつげエクステやまつげパーマを行う職業)
- アイブロウリスト(眉毛のスタイリングを行う職業)
上記の5つの職業は、美容師免許が必須の職業です。
美容師の離職率が高いとされる理由
美容師の離職率が高いとされる主な理由として挙げられるのは、以下のとおりです。
- スタイリストデビューまでの下積みが長い
- アシスタント時代の収入が少ない
- 拘束時間が長い
- 長時間立ち仕事のため体力が必要
- 福利厚生が少ない
それぞれ、詳しく解説します。
スタイリストデビューまでの下積みが長い
スタイリストとしてデビューするまでの下積み期間は長く、平均2〜4年ほどといわれています。しかし、下積みにかかる期間は店舗や各々の実力で個人差があるため、2年でスタイリストとしてデビューする人もいれば、5年経ってもスタイリストになれない人もいます。
下積み期間はアシスタントと呼ばれていて、担当できる業務が限られています。清掃やシャンプーなどの業務がメインとなり、技術を要する仕事は少ないです。そのため、早くスタイリストとしてデビューするためには、就業時間を過ぎてからの時間で練習を重ねることが必須です。
さらに、アシスタント時代はお客さまに直接感謝される機会も少ない傾向にあります。華々しい姿を夢みていた方は、理想と現実とのギャップに「いつスタイリストになれるのか」と思うでしょう。先の見えない不安や焦りから、アシスタントのときに離職を選ぶ人も多くいます。
アシスタント時代の収入が少ない
アシスタントは対応可能な業務も限られており、収入も低めです。美容師の収入は、厚生労働省のデータによると平均年収約265万円です。なおアシスタント期間は、データよりもさらに収入が少ないと想定されます。
参照元:賃金構造基本統計調査|厚生労働省
だれもがアシスタントからのスタートで、開店前の清掃、使用する道具の準備など施術に関係ない業務から始めます。ブローやシャンプーといった施術も、営業後の練習や勉強会で合格したあとに晴れてお客様に施術ができます。
施術ができるようにならないと指名料も発生しないため、できる施術に制限のあるアシスタント期間は厳しい収入状況になるでしょう。日中のサロンワークを含め、練習や勉強会に参加し知識やスキルを身につけ、スタイリストデビューを目指します。ただし、練習時間にまで残業代を支払えないサロンが多いため、労働時間の多さと収入の少なさが多く離職を選択する人も多いです。
拘束時間が長い
美容師は拘束時間が長く、10〜12時間労働になるケースも多々あります。お客様によりライフスタイルが異なるため、営業時間が一般的に長く設定されています。また、アシスタントは始業前の準備や営業後の清掃もあり、就業時間はさらに長くなるでしょう。美容師は休みも少なく、休みの日を講習会や撮影に充てることもあります。
コンテスト前などは、仕事が終わったあとに練習をします。いくら好きな仕事であっても、「なかなかプライベートの確保もできない」としんどいと思う気持ちも出てきます。このような拘束時間の長さも、美容師の離職率が高い要因と考えられます。
長時間立ち仕事のため体力が必要
美容師の仕事は、体力が必要です。仕事中は、基本的にほぼ立ちっぱなしで作業を行います。カットやシャンプーなどの施術内容によっては腰を曲げたり、かがむ姿勢になったりすることも多いです。サロンによっては、座って作業できる業務もあります。しかし、それでも立ち作業や中腰といった腰に負担のかかる体制が多く、腰痛や浮腫に悩む方も少なくありません。
また、シャンプーやカラー剤などの薬剤で深刻な手荒れや、長時間のカットで腱鞘炎に悩む方も多いです。体力的に限界を感じ、退職を決意する方もいます。
福利厚生が少ない
美容業界は、社会保険の加入率が低い傾向があります。理由は個人経営のお店では、社会保険の加入が義務付けられていないためです。法律上、雇用保険と労災保険は加入が義務付けられていますが、健康保険と厚生年金は加入の義務がありません。
たとえば、美容師の離職率が高く、余裕のない経営状況で営業している美容室では社会保険に加入していない場合が多いです。また、厚生労働省のデータによると美容師の平均賞与額は約6〜12万円です。給料も賞与も少なく、福利厚生が少ないと不満に思う気持ちから離職する方も多いようです。
しかし、近年ではよい人材確保を目指すために福利厚生に力を入れる美容室もあります。そのため、福利厚生の充実度は、サロン選びをする際に必ずチェックすべきポイントといえるでしょう。
美容師はやりがいのある職業でもある!どのようなやりがいがある?
離職率の高さや理由を紹介しましたが、その中でもやりがいや使命を感じ業界で活躍している方は大勢います。美容師の仕事のやりがいは以下のとおりです。
- お客様から感謝されるとき
- さまざまな人との出会いがある
- 努力次第で給料アップができる
- 自分のセンスを形にできる
- スキルを磨き続けられる
やりがいは美容師を続けるモチベーションにもなります。以下で詳しく解説します。
お客様から感謝されるとき
お客様から感謝をいただけるのは、美容師の最大のやりがいといっても過言ではありません。美容師は、直接お客様の喜ぶ顔を見られる職業です。自分の手でお客様を満足な気持ちにできたときに伝えてもらえる、「ありがとう」に勝るものはありません。お客様が喜んでいる姿を見ると自分も嬉しくなりますし、仕事を続けるうえでのやる気にもつながります。
さまざまな人との出会いがある
美容師の魅力は、人との出会いです。美容室にはさまざまなお客様が来店されます。普段では関わることのない方など、世代や性別を問わず出会えます。さまざまなお客様と、会話を広げていく中で、意外な共通点や新たな発見ができるのもやりがいのひとつでしょう。
努力次第で給料アップができる
美容師の給料の多くは歩合制のため、収入を努力で増やせます。技術力が認められると、指名も増えてインセンティブをもらえるようになります。美容師は実力や努力の評価が、ダイレクトに収入に反映する職業です。収入ももちろんですが、しっかりと実力や技術を評価される環境は今後のモチベーションにつながります。
また、実績や人脈が増えると、独立して自分の店を持つ方を夢見る方も多いでしょう。自分自身が経営者となると、さらなる収入アップも目指せます。自分次第で給料をアップさせられる環境であることは、独立した美容師のやりがいになります。
自分のセンスを形にできる
美容師は、クリエイティブな職業です。自分のアイデアやセンスを形にでき、評価を受けられます。お客様のニーズに合わせた髪型や髪色を想像しながら、作り出す姿はまるでアーティストです。
また、コンテストのようにアーティスティックにニーズや目的に合わせた作品を世に出すのも可能です。髪を通じて、美しさやセンスを追求できる美容師の仕事にやりがいを感じる方も大勢います。
スキルを磨き続けられる
美容業界は常に変化しており、流行は絶えず移り変わります。そのときどきに応じて、美容師としての技術を向上に努めることに終わりはありません。トレンドに合わせた薬剤やアレンジ方法、常に技術を磨き続けるからこそ、お客様のニーズにも応えられて満足していただけます。
美容師はヘアスタイルだけでなく、ファッションやメイクなどの流行にも必然的に詳しくなるため、常に学びがあり知識が増えます。このことからも、美容師はおしゃれが好きな人や向上心のある方に向いている職業といえるでしょう。
美容師として長く働くためのサロン選びのポイント
美容師として長く働くためには、サロン選びが非常に重要なポイントになります。サロン選びに成功すると、離職の確率が低くなり、より長く勤められる可能性も高まります。
ここでは、美容師として長く働くために押さえておきたいサロン選びのポイントを紹介します。
- 研修や教育制度がしっかりしているサロンがおすすめ
- 福利厚生の充実さで選ぶ
- 在籍中の美容師の平均勤続年数を確認する
- 実際の現場を確認してサロンの雰囲気を知る
- キャリアパスを確認する
それぞれのポイントを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
研修や教育制度がしっかりしているサロンがおすすめ
まず、サロンの研修制度や教育制度がしっかりしているサロンは、よい環境のサロンだといえます。美容師はスタイリストになるまで、シャンプーから始まりブローやカットなどの美容技術を学びます。容易でない技術が多く、店内での教育制度やカリキュラムは重要です。
- スタイリストになれるまでの期間の目安
- 練習の主体時間は朝なのか、夜なのか
- 店舗の練習会などの有無
- 外部の講習会の有無
どのようなスタイルが自分に合っているのか、しっかりと検討したうえで候補先を絞ると失敗しにくいです。
福利厚生の充実さで選ぶ
美容師として長くお店で働くために重視したいのは、「福利厚生」です。以下では、あると嬉しい福利厚生をいくつか紹介するので、職場探しの際の参考にしてください。
- 交通費の有無
- 社員登用制度
- 独立・開業支援制度
- 社会保険の加入
このほかにも、他のサロンとの差別化を図るためにユニークな福利厚生のあるサロンも増えています。家庭と仕事の両立を支援する「短時間正社員制度」や、誕生日に休暇が取れる「バースデー休暇」、失恋したら休暇が取れる「失恋休暇」などが挙げられます。
在籍中の美容師の平均勤続年数を確認する
在籍中の美容師さんが長く勤めている美容室は、働きやすい会社の場合が多いです。自分に合うか合わないか問題もありますが、まずは、実際の声・口コミは確認しておくと安心でしょう。平均勤続年数を調べたいときは、大手美容情報サイトや知り合いからの口コミを集めるのがおすすめです。
また、就職活動の際に直接質問するのもひとつの方法です。より多くの情報を収集ができると、長く働ける職場かきちんと見極められます。
実際の現場を確認してサロンの雰囲気を知る
気になるサロンへは実際に足を運び、雰囲気を肌で実感するのがおすすめです。アットホーム、高級感、ナチュラルとさまざまな雰囲気やイメージがお店ごとにあります。実際にお店に行くと、SNSやホームページだけでは分からないところが見えるでしょう。
条件面では希望どおりでも、入店してから実際の雰囲気が合わないと離職の原因にもなりかねません。また、将来先輩となるアシスタントの方たちが、のびのびと働いているかも合わせてチェックしておくと安心です。
キャリアパスを確認する
美容室を見極めるために、キャリアパスも確認しておきましょう。キャリアパスとは、キャリアアップにかかるおおよその目安です。美容師でいうと、アシスタントから独立までの期間を指します。美容師のキャリアは以下のとおりです。
- 見習い期間
- アシスタント
- スタイリスト
- トップスタイリスト
- 店長・統括マネージャー
- 独立
以下で詳しく解説します。それぞれの店舗によって違いはありますが、参考程度にご覧ください。
見習い期間
美容師免許を取得するまでの期間は、お客様の髪に触れる業務はできません。受付や清掃、洗濯などの事務作業がメインです。美容師を目指してアルバイトをするような場合は、美容師免許が必要ない業務に携わります。
アシスタント
アシスタントは、平均2〜4年が目安です。スタイリストのサポート、受付や清掃がメインの業務です。中には、スタイリストになるためのテストを受けさせてもらえないお店もあるため、あまりにもアシスタント期間の平均が長いお店は避けるのがよいかもしれません。
スタイリスト
はじめは、ジュニアスタイリストとして腕を磨きます。明確な期間の目安はありませんが、ある程度の期間は実績と指名数を増やせるように経験を積みます。
トップスタイリスト
トップスタイリストになるまでに、8〜10年ほどかかる美容師が多いです。複数のスタイリストのなかで、指名数・実績がある人をトップスタイリストと呼び、お店の看板としてみられるようになる立場です。
店長・統括マネージャー
自分の店舗や複数の店舗を管理する、店長・統括マネージャーになるまでに10年以上かかるケースが多いです。人材の育成やお店の経営など、経営者としての業務を行います。さまざまな苦労はありますが、独立の際にプラスになる経験になるでしょう。
独立
実績と経験を積んだころ、自分のお店を持つ人も出てきます。期間の目安はありませんが、実力や人脈など自分の顧客がいないとサロン経営は難しいでしょう。しかし、独立のバックアップや支援をしてくれる会社も多くあります。長くお店を存続させる大変さや苦労はありますが、自分の理想を詰め込んだサロン経営は自由度の高さや収入が増えるメリットもあり、このうえないやりがいも感じられます。
まとめ
美容師は人気の職業ですが、離職率が高い職業でもあります。普段美容室で見る華やかなイメージの一方で、努力や苦労が大きく理想と現実のギャップから離職を選ぶ人も多いです。
しかし、長く勤められるサロンを選ぶと離職せずに長くキャリア形成が可能です。これから美容師の道に進みたい方はサロン選びをこだわり、長く勤めキャリアアップを図りましょう。