美容師に将来性はある?長く働くためのポイントと将来性を意識した働き方を紹介
美容師になっても将来性がないので、長く働けないのでは?と思っている方はいませんか。本記事では、そのような不安を抱えている方に向けて、美容師の現状や問題点を解説するとともに、将来性を意識した働き方のポイントを紹介します。この記事を参考に、ぜひ多方面で長く活躍できる美容師を目指しましょう。
目次
美容師の需要数と現状
厚生労働省が発表した「令和4年度衛生行政報告例の概況」によると、令和4年度3月末における美容所の数は、全国で約26万9千店舗です。前年の令和3年度3月末はおよそ26万4千店舗であるため、約5千店舗増加していることになります。
このことから現状では、美容師にとって働く場所は多く、需要は安定している、といえるでしょう。
また、近年では、病気や年齢などが理由で美容院へと出かけることができない人向けに、自宅や施設を訪れて施術する「訪問美容」のニーズも高まっています。特に介護が必要な人へ施術する「介護美容師」や「福祉美容師」は、ますます需要が増えるでしょう。
また、お客様のニーズも多様化しているため、美容師には時代の変化への敏感さと対応力が求められている、といえます。
美容師の将来性は?
今後美容業界で働きたい方にとって一番気になるのが、美容師の将来性ではないでしょうか。そこでここからは、美容師に将来性があるのかどうかを解説していきましょう。
実力があれば安定した収入が得られる
美容師になるには国家資格に合格する必要があるため、誰でも簡単になれる職業ではありません。また、ヘアカットやカラー、スタイリングなどは各々の技術とセンスに大きく左右されます。
お客様のニーズに的確にこたえ、希望を叶えるスキルや最先端のトレンドをキャッチし、それを技術に落とし込むセンスがあれば、お客様からの指名も継続できるため、安定した収入が得られるでしょう。
将来性を高めたい、と思う方は確かな実力とセンス、それに自己プロデュース力を身につけることをおすすめします。
AIやロボットに仕事を奪われるって本当?
美容師に求められるのはお客様ひとり一人のニーズに合った対応力、またお客様の魅力を最大限に引き出す高度で繊細な技術と美的センスです。また、施術中の何気ない会話からお客様の好みや嗜好をキャッチするコミュニケーション能力も問われます。
これらの技術やスキルは、決してAIで対応できるものではありません。そのため、AIが美容師の仕事を完全に模倣するのは非常に難しい、といえるでしょう。
とはいえシャンプーに「自動シャンプー」を導入するなど、一部の単純作業にロボットを取り入れている美容院も少なくありません。今後、コミュニケーションを必要としない簡単な作業はAI、お客様との対話や確かな技術が必要な作業は人間、という風に、業務の使い分けをされる日が来るかもしれませんが、AIが美容師の仕事をすべて担うのは現実的ではありません。
美容師に将来性がないと言われる理由
美容師は今後も需要が増えることが予想され、なくなる可能性が低い職業です。にもかかわらず、「美容師には将来性がない」という声もしばしば聞かれます。それはいったいなぜなのか、主な理由をピックアップして解説しましょう。
労働環境が厳しく離職する人が多いため
美容師に将来性がない、といわれる大きな理由のひとつが労働環境の悪さです。美容師は閉店後に店内の掃除をしたり、翌日の開店準備をしたりしなくてはいけません。また、新人は閉店後にマネキンを使ってカットの練習を行います。そのため、どうしても拘束時間が長くなりがちです。
また、一日中立ちっぱなしになるため、体に負担がかかりやすいでしょう。さらに毎日薬剤やシャンプーを使用するため、手荒れに悩まされる人も少なくありません。
このほか、美容師は顧客の予定に合わせて動かないといけないため、なかなかまとまった休みがとりにくいともいわれていて、混雑時はなかなか休憩もとれません。このように、美容師という職業は肉体的、精神的にハードな面が大いにあるため、早々にリタイアしてしまう人が多い傾向にあります。離職率が比較的高めであることから、将来性がないと考える人がいるようです。
美容師としてデビューするまでの収入が低いため
美容師としてデビューするまでのアシスタント時代の収入の低さも、将来性がないといわれる一因です。アシスタントの月収はおよそ15万円~18万円程度で、労働時間が長く立ちっぱなしの仕事であることを考えると決して高いとはいえません。
とはいえ経験を積んで、トップスタイリストや店長クラスになると月収30~40万円も可能です。また、指名料や物販売り上げなどでさらに高い月収も目指せるでしょう。
しかし、そこに到達するまでにはかなり金銭的に苦しいのが現状です。また店によって給料も異なり、働く場所によっては給料が低いケースもあります。このような金銭的事情から、「美容師には将来性がない」と考える人もいるのです。
将来性を意識した美容師の働き方
美容師として成功するには、将来性を意識した働き方をしなければいけません。ここからは、美容師の主な働き方をピックアップし紹介します。雇用形態や働く場所をチェックして、自分にはどのような働き方が合っているのかを考えるようにしましょう。
安定した収入を希望するなら社員として働く
美容師として安定して働きたい、という場合は正社員がおすすめです。多くの美容院は、給料が固定給+歩合制を採用しているため、たとえ病気やケガなどで長期に働けなくなったとしても、固定給は保証されます。また、社会保障が受けられたり、店舗によっては福利厚生が充実していたりするなど、安心して働ける環境が整っているのが魅力です。
しかし、正社員はアルバイトやパートとは異なり、営業時間はフルで働かなければいけません。それ以外にも開店前の準備や閉店後の後片付け、新人への教育など、営業時間外の業務もたくさんあります。時間の融通が利かないため、将来的に子育てと仕事の両立が叶わない可能性もあるでしょう。そのような方は、パートやアルバイトといった時間に融通が利く雇用形態がおすすめです。
正社員は美容師としてしっかり働いてスキルアップしたい、という方にぴったりの雇用形態だといえます。
フリーランスとして多用な働き方を目指す
決まった美容院に所属せず、個人事業主としてフリーランスで働く美容師も増えています。フリーランスとして働く方法は、主に3つです。
ひとつめは業務委託として働く方法で、サロンや美容院から業務を委託される形で、お客様への施術を行います。業務委託は完全歩合制のため、働いた分だけ収入が増えるのが魅力です。また、勤務時間や休日を自分で自由に設定できる、集客や物販など施術以外の業務をする必要がない、といったメリットもあります。
一方で業務委託は正社員のような保証がないため、病気やケガで休むとその分収入は減ってしまいます。また、個人事業種になるため、確定申告などの業務上の面倒な手続きもすべて自分自身で行わなければいけません。なるべく自由に自分のペースで働きたい、という方は、業務委託が向いているかもれません。
もうひとつの働き方が、「面貸し型」です。面貸し型では他の人が経営しているサロンの空き時間を借りて仕事をします。美容師と経営者は雇用関係にはなく、サロン経営者と利用者、という関係です。サロンへはあらかじめ決めておいた利用料を支払い、そのほかの売り上げはそのまま収入になります。契約内容はそれぞれ異なり、借りた時間分の料金を支払う場合や売り上げのなかから数%を支払う場合があります。面貸しの最大のメリットは、指名客が多ければ多いほど収入が多くなる点です。
面貸しは自分自身で営業する時間が決められるため、時間の融通が効きやすい点が魅力です。また、自分で店を持つよりもリスクが少ないといったメリットもあります。
一方で面貸しの場合は、自分自身で集客を行わなければいけないというデメリットがあります。ある程度固定客がついてから面貸しとして、フリーランスで働くのがおすすめです。
美容サロンの一角や個室を、個人もしくは複数の美容師でレンタルして施術を行うシェアサロンも増えています。シェアサロンには設備や備品もすべて用意されており、料金を支払うことでそれらを利用できます。シェアサロンの最大のメリットは、リスクやコストを抑えて独立できることです。
また、場所や時間に縛られず、自由に働けるのも魅力です。さらに利用料を支払えば残りはすべて収入になるため、お客が多いほど手取りが増えるでしょう。しかし、シェアサロンは経理業務からバックオフィス業務まで、施術以外のさまざまな業務を行わなければいけないため注意が必要です。
このように、ひとくちにフリーランスといってもさまざまな働き方があります。フリーランスになる場合は、自分自身にはどの働き方が一番合っているかをしっかりと考えておきましょう。
海外進出を目指す
美容師として、海外進出を目指すのもひとつの方法です。実は近年、世界各国で日本人美容師が重宝されています。特に首都近郊には日系の企業も多く、日本人の駐在者が多数住んでいるため、日本人美容師のニーズが高い傾向にあります。
海外で美容師として働くメリットは、勤務時間の短さです。たとえば日本では営業時間後に行われる掃除ですが、海外では掃除担当の人を専属で雇っていることがあるため、営業時間が終わればすぐに退勤できます。
また、仕事とプライベートの線引きがしっかりされている点も魅力です。働いた分だけお給料はきちんともらえるため、サービス残業がない、というメリットもあります。
しかし、海外進出をするには美容師としての知識やスキルは必須ですが、なんといっても語学力が必要です。美容師の仕事はお客様とコミュニケーションを取りながら、細かいニュアンスを決め、ニーズにこたえていかなければいけません。また、同僚と意思疎通をしたり、薬剤を使用する際の説明をしたりする際も言葉が必要です。ある程度の専門用語が理解できる、日常会話程度以上の語学力は必要だと思っておきましょう。
訪問美容や高齢者向けサービスも視野に入れる
美容師の活躍が期待されている訪問美容や、高齢者向けサービスで働くことを検討するのもおすすめです。美容院に出かけられない人のために自宅や施設に出向いて施術を行う福祉美容は需要が高く、今後はさらに人気が高まるといわれています。将来的に訪問美容の仕事をしたい、と考えている場合は「福祉理美容師」の資格を取得しておくとスキルの証明になるため就職や集客に有利です。
また、加齢による白髪や薄毛などに悩む人たちを対象にした「髪のアンチエイジング」も、高齢化社会が進むにつれ、需要が高まるといわれています。
美容師として長く働くためのポイント
美容師として長く働くには、いくつかのポイントがあります。それぞれ詳しく解説しましょう。
キャリアプランを構築しておく
美容師として長く働くためには、早い段階で自分のキャリアプランを構築しておくことが大切です。一般的な美容師のキャリアプランでは、アシスタント業務を経てスタイリスト、トップスタイリスト、店長へと昇格していきます。なかには独立する、フリーランスになる、という選択をする人もいるでしょう。美容師の経験を生かして異なる業種にチャレンジすることも可能です。
いずれにせよ、時代の流れに柔軟に対応しつつ、最終目標を決めることが重要です。自分のキャリアやスキル、年齢、体力、ライフステージと照らし合わせて、どのようなゴールを目指すべきかをしっかり考えておきましょう。
積極的にスキルアップや新たな技術を習得する
美容師として幅広く活躍するためには、スキルアップが欠かせません。美容関係の資格を取得したり、セミナーに参加したりして、常に自分のスキルを磨いておきましょう。
また、美容師にはスキルと同じくらいセンスも重要です。最新のトレンドをキャッチアップできるようにアンテナを張り巡らせておきましょう。
実力やセンスが磨かれれば、その分働き方の選択肢も広がります。時代の変化にもすぐに対応できるため、美容師として長く第一線で活躍できるでしょう。このほか、接客力や対応力、情報収集力も身につけておくと今後の仕事に必ず役に立ちます。常に自分を高める気持ちを忘れずに、日々努力していきましょう。
+αのスキルを身に着ける
+αのスキルを身につけることでキャリアアップや独立が実現するだけでなく、仕事の幅も大きく広がります。美容師として幅広く活躍するために、以下の資格取得を目指してみるのはいかがでしょうか。
美容師のキャリアアップにおすすめの資格
- メイクアップ
イベントなどではヘアセットとメイクを同時に依頼されることが多いため、メイクの資格を取得しておくと重宝されます。ヘアメイクの提案から実践までトータルでできるようになれば、評価も高まるでしょう。
- ネイル
近年、トータルビューティーサロンとしてネイルメニューを設置している美容院が増加しています。ネイルアーティストの資格があれば、転職の際、大きなアピールポイントとなるでしょう。
- 着付け
成人式や結婚式、卒業式などで着物を着る場合、ヘアセットも同時に依頼されることが多いため、着付けの資格を取得するのもおすすめです。着物とヘアセットで「和」を極めれば、海外でも注目されるかもしれません。
- カラーコーディネート
色の知識は、美容師に非常に役立ちます。たとえば、肌の色にぴったりのヘアカラーを提案することで、お客様の魅力をより一層引き出せます。また、カラーコーディネートの知識が身につけば、ファッションの分野にまで仕事の幅を広げられるでしょう。
- まつ毛エクステ・まつ毛パーマ
今やヘアサロンの定番メニューになりつつあるのが、まつ毛エクステやまつ毛パーマです。今後需要はどんどん高まることが予測されるため、資格を持っておいて損はありません。また、美容師だけでなく、アイリストとして活動することも可能になります。
- ボディマッサージ
最近では、お客様に癒しを与えるリラクゼーションサロンの機能を併せ持つ美容院も増えています。マッサージをはじめとしたエステ関係のスキルを身につけておくと、転職に有利に働きます。また、独立して開業する際にも、マッサージメニューのあるサロンとして、ほかの美容院と差別化できるでしょう。
まとめ |今後のキャリアを見据えて働こう
美容師は過酷で定収入のため将来性がない、と思われがちですが、工夫と努力次第で、多様な働き方が可能になります。仕事の幅が広がれば、自分に合った働き方が探せるだけでなく、収入アップも目指せるでしょう。長く一線で活躍するために、自分がどのような美容師になりたいのかを考え、その目標に向けたキャリアアップを目指しましょう。